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高森明勅
2022.6.20 09:00皇室

天皇陛下ご一家が仲睦まじく伝統のご養蚕作業を行われた

皇室において伝統的に“皇后のお務め”とされて来た
「ご養蚕(ようさん)」。

しかし平成時代には、上皇・上皇后両陛下がおそろいで、
蚕(かいこ)の繭(まゆ)を繭づくりの専用器具である
蔟(まぶし)から掻(か)き取る「収繭
(しゅうけん、“繭掻き”とも呼ぶ)」作業に当たられていた。

先頃、天皇陛下ご一家におかれては、
皆様“総出”で養蚕に関わるいくつかの作業を行われた。

まず6月1日、皇居内の紅葉山御養蚕所(もみじやまごようさんじょ)で
皇后陛下が「給桑(きゅうそう、蚕にエサの桑を与える)」や
「上蔟(じょうぞく、蚕を繭になるための蔟に移す)」などの
作業を行われた際、天皇陛下と敬宮(としのみや、愛子内親王)
殿下もご一緒に作業をされた。

更に同11日、皇后陛下による「初(はつ)繭掻き
(最初の収繭作業)」の後、天皇陛下、敬宮殿下がお加わりになり、
「毛羽(けば)取り(繭の周囲にある毛羽を取る)」や
「繭切り(繭の中で成虫になった蚕が外に出やすくなるように、
繭の両端を切る)」の作業をご一緒になさった
(さらに、先立つ5月19日の御給桑の際にも天皇陛下が
ご一緒されていた)。

このように、ご養蚕に関わるいくつかの作業を
天皇陛下ご一家がご家族総出で行うことは、
おそらく前例がないはずだ。

これには、それぞれ1日と11日の2回とも、
皇后陛下の体調が整わず、期日を延長した事実に照らして、
皇后陛下をご負担を軽減しようとされた、という事情が考えられる
(皇后陛下におかれては、くれぐれもご無理をなさらないように
願いたい)。

また、敬宮殿下は生き物好きで、学習院初等科の頃からお住まいで、
ご自分でも蚕を飼ってこられた点も、見逃せない。
側近の説明は以下の通り。

「陛下は歴史的観点からご興味をお持ちで、
また、ご一家でご一緒になさることを楽しまれる
お気持ちの表れではないか」(1日)

「陛下として、ご家族としてお支えなさりたい気持ちと、
とても仲が良いご家族なので、お三方の作業を
お楽しみになりたい気持ちもあると思う」(11日)

先日の、敬宮殿下が成年を迎えられた際の
記者会見でのご発言から、ご家族がどれだけ
仲睦まじくいらっしゃるかは、たやすく想像できる。
お三方ご一緒の作業では笑顔が弾けていたという。
皆様がいかに楽しく幸せな時間を過ごされたか、
拝察するに難くない。

さらに、上皇・上皇后両陛下がご一緒に収繭に
携わられた前例も踏まえ、“令和流”として
ご家族そろって様々な作業を行われたことで、
将来もし女性天皇が即位されても、ご養蚕の在り方をめぐり
男女の役割分担を固定的にとらえて、無用な混乱を生じる
虞れはほぼ無くなったと言える。

あるいは、天皇陛下はそうした可能性もあらかじめ考慮された上で、
さりげなく一つずつ手を打たれているのではあるまいか。

【高森明勅公式サイト】
https://www.a-takamori.com/

高森明勅

昭和32年岡山県生まれ。神道学者、皇室研究者。國學院大學文学部卒。同大学院博士課程単位取得。拓殖大学客員教授、防衛省統合幕僚学校「歴史観・国家観」講座担当、などを歴任。
「皇室典範に関する有識者会議」においてヒアリングに応じる。
現在、日本文化総合研究所代表、神道宗教学会理事、國學院大學講師、靖国神社崇敬奉賛会顧問など。
ミス日本コンテストのファイナリスト達に日本の歴史や文化についてレクチャー。
主な著書。『天皇「生前退位」の真実』(幻冬舎新書)『天皇陛下からわたしたちへのおことば』(双葉社)『謎とき「日本」誕生』(ちくま新書)『はじめて読む「日本の神話」』『天皇と民の大嘗祭』(展転社)など。

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